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第38話 ◇帰りたくない

Author: 設樂理沙
last update Huling Na-update: 2025-04-14 08:40:09

38.

 「一緒に家に帰ろう。

 2か月余りもここで暮らしたんだから、もう旅先の生活も

充分堪能したろ? 息子たちだって待ってる 」

 『息子たちのことを持ち出すのは止めて。

 あの子たちだってもう子供じゃないんだし、私のやりたいように

していいって、逆に応援してくれてると思う。

 納得のいくまで家には帰らないわ。

 ここの暮らしが充実してるの。

帰るように気持ちが決まったら連絡するから。

 今はそっとしておいて。あなただって私がいないといろいろ

羽目が外せて自由にできるんだし。

 あんな宣言なんて忘れて好きにすればいいのよ?

 嫉妬してあなたを責めたり縛り付ける妻が側にいないなんて

あなたのように生きてきた人にはとってもGoodな環境のはず。

 ところで……

こんな僻地までわざわざ尋ねて来て、帰って来いCallする

あなたの行動が理解できないんだけど?』

 夫はビミョーな面持ちで、じっと私の言い分を聞いていた。

 私の真意を測りかねているようだ。

 大丈夫ぅ。

 今は理解出来なくても私が夫に対してどんな気持ちを

持っているか、その内分からせてあげるから。

 ここはひとつ退散してくださいな、というのが

今の嘘偽りのない気持ちだ。

『取敢えず、今日は私の家に泊まって明日の朝帰ればいいから。

今日新鮮なキュウリとトマトが採れたから、夕飯はオムライスと

サラダにするわ』

 そう言いながら、さっきから私の側にいる仔猫のミーミを

見せた。

 『この子、私の飼い猫のミーミっていうの。可愛いでしょ。

あっちにいるのがコウ』

 「旅に出る前に猫がマイブームって言ってたけど、ホントだった

んだな。君が猫好きだったなんて聞くまで全然知らなかったもんなぁ」

 『うん、そうでしょうね。私もこっちに来るまでっていうか

来る少し前に気になり出したっていう流れで

私もこちらに来てから実際飼うようになったわけだし、あなたが

そう思うのも無理ないわ。

 今となっては、どうしてもっと前から猫の良さに気付けなかった

のかと、悔しいくらい』

「猫2匹、家に持って帰って来るといいよ。

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